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現代語訳 従軍日録 ー幕末、紀州の漢学者が歩いた四十八日間ー

(文芸社 川合梅所 著 山崎浩 訳・註)
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 江戸から明治への転換期は、国を案じて行動した人が時勢の変化により、一夜にして英雄とも罪人ともその評定がひっくり返ってしまうような、混乱を極めた時代 。1863年、鎖国をやめ開国しようとする日本を憂え、尊王攘夷に傾いた志士たちが倒幕を目指し武装蜂起した「天誅組の乱」も政変により一転し、幕府のみならず天皇からも討伐の対象になってしまいました。

 本書はその事件が起きた当時、紀州藩が編成した大阪城の警備にあたる兵士団に召集された川合梅所が、甲冑を付け行軍した日々を漢文で綴った日記です。川合小梅の夫である梅所は儒学者で、紀州藩の藩校である学習館の校長を務めていました。

 48日間にわたるその日記には「嘆きながら形勢を議論し、膝を接して時局を話し合った」「人糞にまみれて一夜を明かした」「騎兵が切腹している賊を見つけ、その首をはねた」といったような、現場の緊迫感と凄惨さの伝わる記述があります。

 また同時に、「詩歌を口ずさみながら前後左右の景色を見てゆく」「山景色を鑑賞し、漢詩を作る」など、学者らしい梅所のふるまいも記されています。

 心優しい儒学者の梅所が、70歳という高齢で兵士にならざるを得なかった時局を一体どのように乗り切ったのか…まず小梅の孫の子どもである志賀裕春氏が日記を読み下し、さらにそれを読み〝虜になった〟という、小梅の孫の孫の夫にあたる山崎浩氏が詳しい訳と註を加え、より理解しやすくして下さいました。

 時代に翻弄されながらも、自己を確立してゆく方法を人が求めるのはいつの世も同じ。子孫の有志がご先祖様を慕って漢文や歴史の勉強に精を出された結果、広く一般にも読みやすくなった『従軍日録』は、混迷を極める現代を生きる私たちの「何か、精神の拠り所を見つけたい!」という切実な願いに、頼もしく応えてくれるかもしれません。

​ (文 檀上智子)

小梅日記を楽しむ会

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