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川合小梅生誕220年記念イベント『川合小梅の絵画作品を観よう』開催

執筆者の写真: 小梅 川合小梅 川合

更新日:2024年7月30日

 2024年1月8日(月・祝)、和歌山市立博物館で「川合小梅の絵画作品を観よう」を開催しました。


 イベントの冒頭で、小梅の絵画10点を所蔵する和歌山市立博物館の学芸員・山下奈津子先生が、小梅の画業について日記を元に講演されました。講演内容を要約します。


 小梅は1804年に生まれ、1889年11月2日に亡くなりました。幼少の頃に父が亡くなったため儒学者であった祖父を親代わりに育ちました。16歳で結婚し、夫の梅所は祖父の婿養子となり、一人息子を授かりました。

 小梅が結婚後50年以上にわたり書き続けた日記は、当時の女性や武家層の生活を知る資料として広く活用されており、夫、息子、孫、親類など交流のあった人々が数多く登場します。

 その日記の中で小梅の絵画歴を詳しく知ることができるのは1882年(明治15年)8月9日のものです。その年には、当時、洋画に押されていた日本画の復興を目指した絵画展「第一回内国絵画共進会」(和歌山から29人が出品)が開かれており、小梅はそこへ出品した際の願書に自身の絵画歴をまとめ、さらにそれを日記に書き写しているのです。

 そこには、絵画の師は紀州藩のお抱え絵師であった野際白雪であり、白雪は野呂介石の門人で流派は文人画であると記されています。また、同年9月16日の日記には和歌山から出品した人の名前が並んでいますが、小梅は当時78歳であり、高齢であったためか、記憶違いかと思われる箇所が少々あります。いずれにしても、小梅の名前が全国に知られたのはこの絵画展でのことでした。なお、野際白雪の絵画は、県立博物館に所蔵されています。

 次に小梅の画業は、節句に飾る雛や武者絵、神仏に供える絵馬、肖像画、仲間内での展観に提出する絵、家具(ふすまや箱)などを装飾する絵、店ののれんや衣服の模様、絵の先生と分類されます。小梅といえば花鳥画や美人画を多く描いたイメージが強いですが、節句に合わせて描いた源義家の絵画も力を込めた作品として当館に残されています。源義家は頭が良く武術にも優れていたため端午の節句の題材としてよく描かれていました。

 また、小梅78歳のこの年1月4日の日記には、息子の雄輔が開いていた私塾の年始の始業に合わせて、学問の神様といわれる菅原道真を描いた『天神図』を描いたことを記しており、一時期は『天神図』をよく描いていました。

 肖像画の中で注目されるのは『三輪文行父母像』です。この絵は、当館の前任の学芸員が和歌山市永穂の旧家が取り壊される際に現場でこの絵を救出し、後に当館に収蔵されたものですが、この絵の注文を小梅が受けた経緯については、50歳の頃の日記に詳しく記述されています。また、三輪文行さんの孫にあたる常松さんは小梅に絵を習っていたことが分かっています。

 ここから、絵の先生をしていたことにも注目してお話しします。絵を教え始めた時期については、1876年(明治9年)1月の日記の記述に見えます。「ますえ」という名前の女性に教えたとあり、その前年まで雄輔が寺子屋を開いていたことから、小梅が絵を教える素地はその寺子屋にあったと考えて良いのではないでしょうか。

 その後の1881年(明治14年)の5月の日記には、和歌山市永穂に住む杉山良千代という人が、絵を習いたいという三輪常松を連れて来たという記述があります。永穂は、『三輪文行父母像』が発見された旧家のあった土地ですので、その絵は常松が所有していたのですね。小梅は、常松の絵について「随分出来る」と褒めています。その教え方は、お手本を渡し生徒がそれを参考に描いて小梅に見せるというものです。

 また、明治15年9月15、16日の日記には、10代初めから中頃であったと思われる常松から、当時見せ物として存在していた地獄絵図を表現した”生人形”の絵を描いてほしいと頼まれ「あほらしけれど描く」と日記に記しています。

 三輪常松さんはその後、京都で郵便局に勤務した後に絵画の教師になり、大分県、青森県、山梨県の中学校を転々とした後に1943年(昭和18年)に永穂へ戻り2年後に亡くなりました。常松の描いた花や風景のスケッチも当館に収蔵されています。

 前述の小梅の明治9年の日記に見える「ますえ」という教え子、伊東増江さんは、華道家、看護師として活躍しました。また、歌舞伎作家の榎本虎彦、軍医の吉田又橘も小梅の教え子である可能性があると考えられます。

 小梅が、主婦日記を残した人、画家であったことに加え、絵の教師でもあったことにもぜひご注目ください。


 講演会のあとは、館内に展示されている川合小梅の作品を参加者みんなで鑑賞しました。

                                  (文 檀上智子)











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