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『小梅日記を読む』 第1回⑥「ええじゃないか」

  • 執筆者の写真: 小梅 川合
    小梅 川合
  • 2025年10月15日
  • 読了時間: 3分

更新日:2025年10月16日


 「ええじゃないか」の最後になります。永穂にもお祓いが降ったので、赤襦袢を貸してあげたという話です。永穂は和歌山市の東部、紀の川北岸に位置する集落で、今も地名が残っています。

 次に、船大工町に何かが降ったが、家族が狐に憑かれた、という不思議な話です。「ええじゃないか」と狐憑きがセットで語られているのは非常に興味深いですね。近隣にも狐に憑かれた者が複数いたことが読み取れます。

 「二十六日に大風が吹くので戸口に笹を立てれば避けられる」という予言が流布し、笹を立てることが流行したことも書かれています。小梅はこれらの奇妙な現象を「古今未曽有のこと」と感想を述べています。


「小梅日記」1867(慶応3)年12月23日の項の原文=和歌山県立図書館蔵を複写           現物アクセスはインターネットで和歌山県立図書館デジタルアーカイブ→小梅日記→(8)→59、60
「小梅日記」1867(慶応3)年12月23日の項の原文=和歌山県立図書館蔵を複写           現物アクセスはインターネットで和歌山県立図書館デジタルアーカイブ→小梅日記→(8)→59、60

左記原文を筆者川合小梅のひ孫志賀裕春さんが判読=平凡社東洋文庫が1972(昭和47)年~76年刊、村田静子校訂「小梅日記―幕末・明治を紀州に生きる」全三巻の第二巻に所収
左記原文を筆者川合小梅のひ孫志賀裕春さんが判読=平凡社東洋文庫が1972(昭和47)年~76年刊、村田静子校訂「小梅日記―幕末・明治を紀州に生きる」全三巻の第二巻に所収


(現代語訳)


慶応三年十二月二十三日 晴れ

 

 さて、永穂の辻文吾が、この間来た時に言うには、「私の隣村へお祓いが降ったのに、私の村へは未だ降らない」とのことだった。今日、文吾の娘のたかのが来て、「私の近所へお祓いが降り、皆、赤襦袢で踊っているので、襦袢貸してくれよ」と言うので、貸してやった。今日の夕方、男風に成って踊るという。男は女風に成るとのこと。


 昨夜の、お八重の話。舟大工町の漬物屋へ、何かが降った。悦びいたったが、弟の息子に狐が憑いた。親類の森屋某が来て手足を括り、線香の火でしきりにくすぶったら、狐はのいた。だが、今度は兄嫁へ狐が憑いたとのこと。中橋筋の何屋かは知らないが、そこの妻へも狐が憑いており、両人が道で会った時に、漬物屋が土下座した。これは中橋筋へ憑いた狐の方が官位が高いからなのだとか。


 さて、又、本町三丁目に白玉という店がある。袋物などを売るところだ。ここの息子へも狐が憑いた。家内中で題目を唱えれば、「そりゃ返す」と、狐は息子を返したが、息子は阿呆のように成ったとのこと。


 休賀町にもそのような者がいて、とかく外へ出たがり、用が有るから行くという。女の衣服を着せたら行かないという。


 また、ここ最近、各家の門へ笹を立てている。何故かと言えば、二十六日に大風が吹くといい、笹を立てて置いたら免れるとのこと。


 本当に聞く事、見る事、古今未曽有のことだ。



 以上で、小梅日記に出てくる「ええじゃないか」に関するお話は終わりです。時あたかも王政復古の大号令が発せられた頃に符合し、討幕派が京都での活動をし易くするために仕掛けたという説もあります。

 江戸時代におよそ60年周期で流行した「おかげまいり」の一形態とする説もあります。

 また、世直しという説もあります。お祓いが降った家は、お祝いをするため大変な出費を要し、家の中を「わや」にされます。打ちこわしのような効果があったのです。

 小梅日記では「ええじゃないか」ではなく「ヨイジャナイカ」で統一されています。「ヨイジャナイカ」の方が騒動を積極的に是認しているように聞こえないでしょうか。紀州徳川家の城下町で世直しを画策する勢力が暗躍していたのかも知れません。小梅日記はこのような想像を膨らましてくれます。

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